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犯罪予測は職人芸からビッグデータ活用へ~防犯とビッグデータ~「子供の安全とビッグデータ」シリーズ~

time 2014/02/26

犯罪予測は職人芸からビッグデータ活用へ~防犯とビッグデータ~「子供の安全とビッグデータ」シリーズ~

こんにちは。子供がイヤイヤ期になって大変・・・でも、ますます溺愛しているビッグデータマガジンの廣野です(笑)
前回の記事から間が空きましたが、第3回目は「防犯」をテーマに、ビッグデータの活用事例をご紹介したいと思います。

 ■“わかっている”犯罪に対する防犯だけで十分か?

 一言で「防犯とビッグデータ」と表現しても、その中身は非常に多岐にわたります。
最近では、人気漫画「黒子のバスケ」の作者が脅迫されていた事件で、犯人逮捕にwebのアクセスログ解析や防犯カメラの画像解析が有効に機能したことは記憶に新しいと思います。
本シリーズは「子供の安全」がメインテーマなので、子供を犯罪から守るために、ビッグデータの技術がどのように応用されているかをご紹介したいと思います。

まずはいつも通り、犯罪に関する統計データから見ていきましょう。

図1は、警視庁が公表している統計データの中で、平成24年度の犯罪被害者数の中から、少年のデータを抜粋したものです。なお、「少年」とは20歳未満を指すので、未成年と読みかえた方が分かりやすいかも知れません。また「未就学」は0~5歳、「その他少年」は中学校卒業~20歳未満の人数をそれぞれ指します。

 

少年犯罪件数

図1 少年に関する犯罪被害件数(警視庁:平成24年犯罪情勢より)

犯罪の被害件数に占める子どもの割合は18.9%(子供206,133件/成人886,045件)で、昨年対比で-6.5%(-75,811件)と減少傾向にあります。年齢が上ると、犯罪被害に遭う件数が急激に増えるのは、子供が成長して行動範囲が広がり、徐々に親の目が届かなくなるからでしょう。

犯罪に合う場所別に見ると、犯罪の被害に遭う割合が高い場所(その他を除く)は、未就学児童については共同住宅・一戸建住宅・道路上が高く、小学生、中学生については駐車(輪)場・共同住宅・道路上が高くなっています。子供の行動範囲を想像すれば、納得できる数字です。

さて、上記の統計データは、犯罪に遭ってしまった“結果”を示したものであり、親としては当然、子供の被害件数が多い(=犯罪に遭いやすい)状況を避けるように教育します。いわゆる防犯教育ですが、注意しなければならないのは、これらの統計は警察が把握しているデータであって、潜在的なものも含めた全ての犯罪を示している訳ではないことです。実際に起こっていても警察が把握していない犯罪や、危ういところで未然に防げた犯罪については分からないのです。

 

■犯罪予測は職人芸からビッグデータ活用へ

このような“犯罪が実行される前の状況”については様々な研究があり、実証されています。「餅は餅屋」と言いますが、「犯罪について一番詳しいのは犯罪者である」という考えに基づいて、犯罪者へのインタビューから犯罪に至る経緯を分析した例として、プロファイリングがあります。犯罪者が語る犯行に至る行動から特徴的な条件を抽出して、犯人像を推測する手法として有名です。『羊たちの沈黙』という映画で、皆さんも一度は名前を聞いたことがあるでしょう。プロファイリングは米国FBIが有名ですが、この手法は職人芸の傾向が強く、まだコンピュータの性能が低かった時代に、少ないサンプルから導出されたものでした。

ビッグデータの時代になって、このプロファイリングが一気に進化します。ビッグデータの利活用が進み、統計学の手法をプロファイリングに応用した「統計的プロファイリング」の誕生です。具体的には、犯罪発生に関するデータ(日時、場所、天候、犯行動機、犯行の手口など)や犯人像(住所、職業、髪型、顔色、声質など)と、地理情報システムのデータを掛け合わせて統計解析することで、犯罪のパターンとトレンドを抽出し、予測されたホットスポット(犯罪多発地点)の警察活動を強化することで、犯罪が発生する確率を大幅に低減させます。

日本でも、関西国際大学の桐生正幸教授が犯罪者プロファイリングから得られた知見を地域防犯に役立てています。桐生教授については、テレビ番組『世界一受けたい授業』にもたびたび出演されているので、ご存知の方も多いと思います。我々がこれまで防犯の常識と考えていた「子供に防犯ブザーを持たせる」「暗い夜道は避けて通る」などは、実は効果が薄いということがデータをもとに証明されています。立正大学の小宮信夫教授の著書『犯罪は予測できる』でも分かりやすく紹介されていますので、ご一読をお勧めします。

 

また、余談ですが「統計的プロファイリング」については、アメリカのドラマ『NUMBERS 天才数学者の事件ファイル』が有名です。以下のサイトで無料視聴できますので、興味がある方は、お時間があるときにご覧ください。

『NUMBERS 天才数学者の事件ファイル』
http://mvnavidr.blog116.fc2.com/blog-entry-9765.html

 

■行く末は監視社会?ビッグデータ活用で忘れてはいけない、もう一つの側面

冒頭に挙げた「黒子のバスケ」の事例でもそうでしたが、ビッグデータを防犯および犯人の早期逮捕に活用する方法は、統計的プロファイリングだけではありません。ソーシャルネットワーク(SNS)のデータやアクセスログの解析からも、犯罪を未然に防ぐ取り組みが始まっています。

特に近年は、子供たちの間でSNSを利用した“いじめ”が増えたり、子供がSNSを通じて犯罪に巻き込まれるケースが増えており、社会問題になっています。ソーシャル・プラットフォームを提供する企業は、基本的には掲示板等への書き込みを規制することはしませんので、親としては別の防衛手段を用意する必要があります。いくつかの企業では、保護者・本人の了解を得たうえで、利用しているSNSのデータを解析し、いじめや犯罪の予兆が現れたらアラートを出す仕組みを提供しています(エースチャイルド社の「フィリー(Filii)」など)。

 

以上のような、ビッグデータを活用した防犯が進化する先は、どのような社会なのでしょうか?安全性や利便性がより高まる一方で、監視社会がやってくるのでは?と不安を覚える人もいます。

例えば、都市部を中心に増え続ける防犯カメラから得られるデータによって、犯人が追跡しやすくなる一方で、あまり知られたくない個人の行動も把握されてしまいます。SNSのログ解析から、犯人の動機や犯行のプロセス(ときには居場所まで!)を予測できる一方で、本当は開示したくなかった個人情報を特定され、望んでもいない商品DMが送られてくる・・・。

プライバシーを守ることが、たいへん難しい社会がやってくるのです。

ビッグデータ利活用のルール整備が進んでいますが、情報のオープン化は誰にも止めることができない時代の潮流です。私たちの知らないところで個人情報が利用され、私たちの生活が“何者かによって”コントロールされているかも知れない。そんな漠然とした不安を後押しするようなプレゼンテーションがありますので、最後にご紹介します。

これは皆さんの不安を煽ったり、ビッグデータの利活用を抑制すべし、ということが言いたくてご紹介するのではありません。皆さんと一緒に、この問題について考えるために共有するものです。近未来の社会が内包する問題について考えるきっかけになれば幸いです。

ミッコ・ヒッポネン: NSAはいかにして世界の信頼を裏切ったのか(TED)


「子供の安全とビッグデータ」シリーズ

【第1回】 ビッグデータで交通事故件数 2割減!
【第2回】熱中症対策とビッグデータ

    

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