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外食産業とビッグデータ ~ビッグデータ活用のための「やさしい業界解説」シリーズ~

time 2014/03/18

外食産業とビッグデータ ~ビッグデータ活用のための「やさしい業界解説」シリーズ~

ビッグデータマガジンの高橋です。

「やさしい業界解説」シリーズは毎回杉浦が担当しておりますが、今回は高橋が執筆いたします。

本シリーズでは、各業界がどのようにビッグデータ分析をビジネスに役立てようとしているか?をテーマにお話をいたします。第5 回目は外食産業を取り上げます。

 

■日本の人口減少により市場規模も停滞。コストも切り詰めている中で打ち手はあるか?

外食産業といえば、人が生活していく上で必要とされる「衣食住」のうちの一つであり、景気の影響は受けにくいとも言われてはいるものの、そもそもの日本の人口減少が進むため、非常に厳しい状況にあると言えます。

外食産業とビッグデータ 市場規模推移

公益財団法人 食の安全・安心財団 附属機関  外食産業総合調査研究センター より
http://www.anan-zaidan.or.jp/data/
(クリックにより拡大表示されます)

そのような状況下での売上拡大の切り札が、海外進出であり、吉野家やミスタードーナツ、モスバーガーなどが、着々と海外出店数を増やしています。

また、外食産業は、1.材料費(食材費)、2.人件費、3.地代家賃の3つの総額を抑える努力こそが利益につながるビジネス構造となっています。特に、FL比率とよばれる、F(フード:材料費)とL(レイバー:人件費)の総額が売上に対する割合が60%を上回ると、改善策が必要と言われ、各社ともこの指標をベースにすでに様々な経営努力をしている状況です。

外食の世界でM&Aが進む理由の一つが、このFL比率改善のために、スケールメリットによる材料費や加工費用の減少を狙うものとも言えます。

アベノミクスによる景気回復が騒がれるものの、市場全体の消費傾向がまだまだ芳しくない状況で、更に消費税の増税も控えており、なかなか打ち手が見出しにくい外食産業ですが、ビッグデータを活用した成長戦略とはどのようなものなのでしょうか。

 

■ビッグデータで廃棄率を75%減!目指せFL比率60%以下!!

通常、材料費を下げると、質の低下を招きかねません。しかし、材料費の内訳には、材料の廃棄ロスが含まれています。これまでも、各社で材料の廃棄ロスを減らすために、他の商品での利用など、材料の効率的な利用などでカバーしてきていますが、本来的には、需要予測の精度を高められると廃棄ロスを下げることが可能です。

2014年1月27日の日本経済新聞にもあがりましたが、回転寿司最大手の「あきんどスシロー」は、いままで店長の勘と経験に頼っていた需要予測を、ビッグデータ活用により廃棄量をこれまでの4分の1ほどに削減できたそうです。

<スシロー、ビッグデータ分析し寿司流す 廃棄量75%減 :日経新聞電子版より>
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK24009_U4A120C1000000/

すべての皿にICチップを取り付け、単品ごとに販売状況を管理。売れ筋がリアルアイムで把握できるだけでなく、顧客ごとの食欲を読む需要予測を可能にし、店長が不在の場合でも店長の勘と経験に近しい需要予測を可能にしたそうです。

あきんどスシローは低価格の100円すしを目玉に成長し、ついに業界最大手となったものの、低価格販売のため、原材料費が50%と非常に高いのが特徴です。このような状況下で廃棄量を減らせるというのは、まさにビッグデータ活用が利益に直結したと言えるでしょう。

もう一つの事例を見てみましょう。2013年3月8日の日経コンピュータの記事には、店舗オペレーション改善事例として、がんこフードサービスのケースがとりあげられています。

<飲食業の生産性をビッグデータで改善 :日経コンピュータより>
http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20130308/343063/

がんこフードサービスは、この記事にもあるように、従業員の労働効率を改善するために、店舗業務シミュレータを開発し、顧客の待ち時間の短縮や、厨房のレイアウトの最適化に活用しています。

そこで、シミュレータの情報をより高い精度で得るために、従業員の現在の行動を測定する事が必要となり、従業員に対して、位置センサーや磁気センサー、ジャイロセンサーなどを取り付け、データを取得し、3次元モデル化して導線を分析したそうです。

「月商3000万円の店舗で、月間の経常利益が300万円も改善した」という記述にあるように、ビッグデータ分析により、店舗従業員の総労働時間の削減を可能にした事例といえます。

 

■ビッグデータで売上拡大につながる商品開発!個客に紐づく情報に勝機あり!!

 

市場が伸び悩む中で、海外進出以外にどのように売上拡大を目指すか。リピート顧客を増やすには、また来たいと思わせるサービスと商品開発が不可欠です。

ファミリーレストランの雄、すかいらーくが運営する「ガスト」は、頻繁かつ定期的に行われる「メニュー改定」に、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が展開するTポイントを用いたビッグデータを活用しています。

<「ガスト」のメニューは「ビッグデータ」で決められる: ZDNet Japanより>
http://japan.zdnet.com/cio/sp_bigdata2011/35018019/2/

これまで、店舗のPOSで取ることができるデータは、「いつ」「なにが」「どのような顧客層」に売れたかという情報、まさに、販売時点情報(Point of Sales)でした。

この3つの情報の中で非常に精度が低いのが「顧客層」情報です。レジでは、「誰が」の情報を正確に確認できないため、店員がおおよその顧客層を識別し入力していました。その結果、誤入力情報が多く、実際にはあまり使えない状態だったようです。

しかし、Tポイントと連携することで、この「誰が」の情報を軸としたPOSデータのカテゴライズが可能になったのです。具体的な個人情報は必要ありません。IDでカテゴライズすれば、“個”客単位でデータを見ることができ、各回の注文が「初回(トライアル)」か「2回目以降(リピート)」を識別できます。

「注文も少なく、リピートもされないもの」はメニューから削除し、「注文数は多いが、リピート率の低いもの」は改善が必要だということがわかります。また、「注文数は少ないが、リピート率は高いもの」は注文数増加に向けた販促を考えていくことになります。

“個”客を軸に売上データを見直すことができれば、来店頻度やメニューのリピート状況、複数店舗の来訪有無など、今までには見ることができなかった意味のある情報が見え、販促に活用できるインプットとなるでしょう。

 

■まとめ:外食産業がビッグデータを活用するためのヒント

 

最後に、ビッグデータの特徴である3つのV(Volume、Variety、Velocity)と、外食産業におけるビッグデータ活用の関係を整理しておきます。

 

Volumeを活かそう!
店舗には大量のPOSデータという購買行動の履歴が残っています。これを有効活用するために、どのように集計すればよいでしょうか。
今まではメニュー単位や顧客の売上総額単位、時間単位の集計が中心でしたが、会員数が多いポイントカードと連携することで、“個”客単位でのリピートやオーダー状況が見え、販促や商品開発に活かせるでしょう。

 

Varietyを活かそう!
POSデータ以外にも様々な購買前の行動を取得し、活用できるチャンスがあります。
例えば、いつ、どの食材が、どのくらい利用され、どのくらい廃棄されたか。店員がいつどのように動き、どれだけの時間接客しているか。来店して席につくまでどれくらいお客様が待たされているか。列ができた時にお客様がどれくらい待たされたか、また帰ってしまったお客様がどれくらいいたか。

しかし、これらのすべての情報を取る必要は決してありません。FL比率を下げられる可能性がある要素に絞って必要な情報を入手し、分析することで、新たな示唆が得られるでしょう。

 

Velocityを活かそう!

従業員の動きや店舗の混雑度を“リアルタイム”に把握できれば、より柔軟な従業員の配置が可能になるでしょう。
また、在庫の状況が“リアルタイム”で把握できれば、オーダー後のキャンセルによるお客様満足度の低下や従業員の手戻りとなる動きも減り、さらには、店舗内・店舗間の在庫調整や、廃棄ロスを減らすための柔軟なリコメンドも可能になるでしょう。

 


<プロフィール>

ビッグデータマガジン高橋範光高橋 範光(たかはしのりみつ)

株式会社チェンジ 取締役
ビッグデータマガジン 編集長

大学・大学院で、経営工学や集団意思決定支援を専攻。

 

卒業後、大手外資系コンサルティングファームに入社。業務システム開発、Webシステム開発、マーケティングROI分析など多方面に渡るITコンサルティングに従事。

現在は、株式会社チェンジの取締役としてIT企業の人材育成に携わりつつ、データサイエンティスト育成事業や、データ解析コンサルティングを手掛ける。

 


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