ビッグデータマガジン

第4回 広告ビッグデータ活用のこれから~ビッグデータ活用のための業界解説~

time 2016/04/12

第4回 広告ビッグデータ活用のこれから~ビッグデータ活用のための業界解説~

 デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)データ解析部のさつまです。

前回までは、広告におけるビッグデータ活用についていくつかの例を挙げて紹介してきました。最終回となる今回は、最新の動向やこれからの活用の方向性についてご説明したいと思います。

【シリーズ記事】
インターネット広告業界解説~ビッグデータ活用のためのやさしい業界解説シリーズ~

第1回:広告業界におけるビッグデータとは
http://bdm.change-jp.com/?p=3452
第2回:「基礎属性/趣味/嗜好」「購買に至る可能性」
http://bdm.change-jp.com/?p=3605
第3回:インターネット広告業界解説「購買ステージ」
http://bdm.change-jp.com/?p=3618

 

1.インターネット広告の潮流

インターネット広告は一般の生活者の方に向けて配信することが多いため、その潮流は、インターネットユーザを取り巻く環境の変化が大きく影響します。例えばスマートフォンの普及がそれにあたります。全年代で62%と過半数を超える利用率であり、特に若年層では20代で94%、30代でも82%に達しています。

広告ビッグデータ活用のこれから

総務省 平成26年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査より

 

インターネット利用時間についても、フィーチャーフォンからスマートフォンに移行するに従って利用時間が顕著に伸びています。

広告ビッグデータ活用のこれから

総務省 平成26年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査より

 

これに伴って、企業の広告費も当然スマートフォンにシフトしていく流れが起きています。日本のインターネット広告の市場規模は1兆円超と言われていますが(電通「日本の広告費」)、そのなかでもスマートフォンの存在感は年々増しています。例えば当社の直近の四半期決算 ではスマートデバイス(≒スマートフォン)広告が広告売上の40%を超えており(26ページ)、このスマートデバイスへの広告費のシフトはまだ続くものと考えています。

 

さて、スマートフォンの「規模」という点でのインパクトは上述の通りですが、「使い方」あるいは「生活そのものの変化」についても考えてみたいと思います。

スマートフォンが爆発的に普及したことによって、多くの生活者は移動中も含めて常時インターネットに接続することが可能になりました。これまでインターネットはパソコンから接続するものであり、いわば腰を据えて使用するものだったことを考えると、移動中のスキマ時間などに気軽に一瞬だけ使う、という使い方への変化は大きなパラダイムシフトです。また、利用頻度や利用シーンだけでなく、利用の内容としてもパソコンは企業Webサイトの閲覧やサービス申し込み、書類作成などをする人が多いと思いますが、スマートフォンではSNS・コミュニケーションやゲーム、動画などの利用が多い傾向にあります。

広告ビッグデータ活用のこれから

MMD研究所「2015年版:スマートフォン利用者実態調査」より

 

そして、若年層のTV離れも近年よく取り上げられますが、これもスマートフォンの普及と無関係ではありません。若年層中心にスマートフォンに移行し、インターネット利用時間が増加していることを説明しましたが、TVの視聴時間は逆に若年層ほど少ないことが以下の調査から分かります。

広告ビッグデータ活用のこれから

博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所「メディア定点調査2015」より

それでは若年層は映像・動画を視聴していないのか、というとそうではありません。電通総研の調査によれば、10代で80%超、20代で70%超が週に1回以上動画を視聴しています。また、1日あたりの視聴時間においても10代・20代では1時間を超えていると言います。

 

この動画視聴の動向に伴って、広告業界でも動画広告の盛り上がりが見られています。

広告ビッグデータ活用のこれから

(株)サイバーエージェント、(株)シード・プランニング デジタルインファクト
「国内動画広告の市場動向調査」
より


2.環境変化とビッグデータ

前章でインターネット広告の潮流としてスマートフォンへのシフトと動画広告について紹介しました。この章では、これらの環境変化をデータの観点でどのように捉えるべきか、いくつか例を挙げて説明します。

 

 

■生活者の置かれている環境の推定

生活者のスマートフォンへのシフトに伴って、スマートフォンからのWebアクセスログやアプリ利用ログが増加するのは言うまでもないことですが、これに質的な変化が伴います。スマートフォンは移動中に使用することも多いため、生活者の置かれている環境によってWeb閲覧の態度、あるいは広告接触への感応度なども異なる可能性があります。ここで環境とは、外出中なのか、会社にいて休憩中なのか、自宅で「ながら利用」しているのか、などを意味していますが、これを推定する方法があればより良い広告体験を提供することができるでしょう。当社では推定技術を開発し、環境によって差があるか検証しています。

 

■位置データの活用

また、スマートフォンを移動中に使用するという観点で、スマートフォンで取得できる位置データを広告に活用する動きも活発化しています。主にスマートフォンの持つGPS機能などを利用して位置を特定するものです。位置情報を活用することによって、例えば小売店舗の近くにいる生活者に割引クーポンを提供する、といった広告活用が見られます。このような「近くにいるなら来てください」という広告活用はデータの観点から言えばシンプルで分かりやすいものですが、もっと高度に・多面的に生活者を理解することにも活用していくべきと考えています。つまり、Web上での行動傾向とリアルな行動傾向を総合的に捉える、ということです。こちらの活用についてはまだ業界としても研究初期段階ではないかという所感ですが、研究が進み、またデータが増加してくれば徐々に事例も出てくるものと考えています。

 

■クロスデバイスマッチング

別の観点で、スマートフォンとパソコンを併用している生活者も多いでしょう。広告やECサイトなどのサービス提供の観点でよく問題となるのが、「スマホで見たあと、PCで買うひとって多いんじゃないの?」ということです。これについてYahoo!JAPANが検証した結果が紹介されています。スマートフォンで広告接触したうちの、実に55%ものユーザがパソコンでコンバージョン(購入や会員登録など)しているという結果です。

広告ビッグデータ活用のこれから

Yahoo! JAPAN スマートフォン向け広告によるコンバージョンの盲点とは?

 

スマートフォンで決済する人の割合は年々増加するため、この2015年3月時点のデータの検証結果と現在では少し異なる可能性がありますが(おそらく異なるでしょう)、傾向としてこういったことが起きるということは重要な事実です。これを分析して把握するためには、複数の端末が同一人物によって使われていると判別するためのクロスデバイスマッチングの技術が必要になります。上述のYahoo!JAPANの事例ではおそらくIDを分析に使っているものと思われますが、それ以外に推定で紐づける方法もあり、実際に当社では推定でマッチングする技術を開発して特許を取得しています。

 

■TV離れと動画広告

TV離れの議論にも触れましょう。主に若年層がTVを視聴しなくなり、TVだけでは以前と比べて若年層にリーチしにくくなっています。これを補完する手段として動画広告が注目されています。TVを補完するための動画広告、という観点で例えば「TVを視聴していない人」をターゲットに動画広告を配信したい、というニーズがあります。在宅していなければTVを視聴していない、という考え方で推定する方法もありますし、TVで話題のキーワードなどに反応や関心を一切示していなければ観ていない可能性がある、などの推定方法も考えられます。前者では位置情報の活用、後者ならWeb閲覧履歴などをデータとして活用していくこととなります。

 

3.インターネット広告のこれから

これまでWeb行動データとリアル行動データは分断されており、交わることのないデータでした。スマートフォンの登場によって、それが融合しはじめています。位置情報を活用したインターネット広告はその一例です。

また、TVと動画についても同じことが言えます。まったく異なるものとして扱われていたTVCMと動画広告が、TVでリーチできない人に動画広告で補完するといった形で重なり始めているという動きです。

 

このような新たな融合やオーバーラップが進み、これまで協業の起こらなかった企業(あるいは業種)間での協業やデータ連携が多数発生し、逆に競合ではなかった会社が競合になることも起こってくるでしょう。これまで交わることのなかったデータが新たに融合するときには、データ解析の観点でも新しい考え方や方法論が必要となります。

データはますますリッチ化され多次元になり、より深く顧客や生活者を理解できるようになっていきます。一方で、個人の顧客を直接もたない広告業界ではあまりなじみのなかったCRMデータなども広告関連データとマージされはじめ、個人情報保護やプライバシーへの配慮、更に言うと、データを扱う者としての倫理観が今後ますます重要になっていきます。

 

最後に、第3回(ステージの理解)で言及したように広告は「広く告げる」ものであるということを改めて強調したいと思います。多くの人に認知してもらい、興味・関心を抱いてもらい、理解を促進し、生活者や顧客と長期的な関係を構築することが広告の重要な役割です。個を捉えて個に細分化していっては広告の本来的な意義を損ないます。異種のデータが融合してより深く個を理解できることを、コスト効率の追求にのみ使うのではなく、顧客との関係性強化や広告コミュニケーションシナリオ全体、ひいてはブランド価値向上のために活かしていくことが重要です。

 

【シリーズ記事】
インターネット広告業界解説~ビッグデータ活用のためのやさしい業界解説シリーズ~

第1回:広告業界におけるビッグデータとは
http://bdm.change-jp.com/?p=3452

第2回:「基礎属性/趣味/嗜好」「購買に至る可能性」
http://bdm.change-jp.com/?p=3605

第3回:インターネット広告業界解説「購買ステージ」
http://bdm.change-jp.com/?p=3618

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【執筆企業情報】

DACデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(URLhttps://www.dac.co.jp/

DACデータ解析部は、データサイエンティストやエンジニアなど多様なバックグラウンドを持つ、データ解析のプロフェッショナルチームです。「ビッグデータを基盤に、広告主・媒体社と生活者のコミュニケーションを豊かにする」をミッションに掲げ、日々取り組んでおります。

 

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