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ビッグデータを扱う究極の組織を目指して 楽天技術研究所 森 正弥 所長、平手 勇宇 チーフサイエンティスト ~ビッグデータマガジン・インタビュー~

time 2013/10/09

ビッグデータを扱う究極の組織を目指して 楽天技術研究所 森 正弥 所長、平手 勇宇 チーフサイエンティスト ~ビッグデータマガジン・インタビュー~

ビッグデータマガジンの高橋です。

「ビッグデータマガジン・インタビュー」第2回は、ビッグデータを扱うトップランナーの1社、楽天株式会社。その技術戦略の中核を担う楽天技術研究所の森正弥所長と、平手勇宇チーフサイエンティストへのインタビューです。

 

 ■コモディティ化する技術ではなく先進的な技術を探求するのが「楽天技術研究所」

ビッグデータマガジン インタビュー 楽天さま

<楽天技術研究所 森正弥所長>

楽天技術研究所とはどのような組織ですか?

 

(森氏)楽天の技術者は2000人を超えます。一方、楽天技術研究所は、50人ほどの組織で、コンピュータサイエンスを土台に、アカデミックな手法を用いて、楽天に対して革新的な示唆や大きな成果を生み出すことをミッションとする組織です。

”技術”はOPEN化が進み、きわめてコモディティ化が激しい状況です。このような状況下で、我々の組織ではコモディティ化された領域ではなく、より先進的な技術を探求しています。

常に、新しいビジネスモデルやアルゴリズムなどを考えていますが、意識していることは、研究者の研究行為になるか、すなわち、論文が書けるような先進性があるかどうかということです。

(平手氏)楽天技術研究所は、専門領域別のチームに分かれています。私は、データマイニング、データ解析、自然言語処理等、データに関わる領域を研究するチームのリーダーをしています。

他には、AR(Argument Reality:拡張現実)を初めとした、ユーザインターフェース、インタラクションの領域を研究するチームなどがあります。

 

─具体的にはどのようなことを行われているのでしょうか?

 

(森氏)先ほど申し上げたコモディティ化した技術というのは、たとえば、複数のユーザのデータから潜在的な顧客に商品をお勧めする”協調フィルタリングによるリコメンデーション”などがあげられます。これは、すでにいろんなインターネットサービスで活用されています。

しかし、お客様1人1人のニーズは異なり、商品は各店舗が売れるように見せ方や売り方を工夫しています。それらをどのように最適にマッチング・リコメンドするかといった一歩進んだ技術を研究しています。

一例をあげると、

・2週間しか売り出されないようなキャンペーン商品のリコメンデーションをどのように最適化するか

・楽天市場内であっても店舗が違えば同じ商品でも表記が違ってきますが、そういった商品を、いかに同じものであると識別し、リコメンデーションするか。

などです。

インターネットの世界は従来の正規分布ではなく、べき乗分布の世界、ロングテールで勝負する世界であり、それぞれに最適化されるための技術が求められます。

 

 ■ビジネスの現場と研究所のGAPを埋めた鍵は、”人材”と”英語”

 

─ 一般的に、ビジネスの現場と研究所にはGAPがあるように感じますがいかがですか?

 

(森氏)楽天技術研究所は、先進的な技術から革新的なサービスにつながる研究開発を行う組織です。一般的な研究所と異なるのは、研究で終わらず、プロトタイプを開発し実験できるビジネスの現場があり、サービス・事業開発へとつなげられる環境があることです。

とはいえ、設立した2007年当初は、現場とのGAPを埋めるのに苦労しました。事業部側は当然ながら結果視点であり、我々の探求する“理論”に重きを置くことはありません。そのため、色々工夫をしながら現場とのGAPを埋めてきました。

そんな中、意外に思われるかもしれませんが、英語の公用語化が役立っています。これにより、海外の優秀な技術者を採用しやすくなりました。現在では、研究所だけでなく、現場にもアカデミックな視点を持つメンバーが増え、橋渡しする存在になっています。

(平手氏)データ系でいうと、機械学習を理解し博士号も持っているという外国人の採用が進んでいます。現在、私の部下もほとんど外国人です。そのメンバーが、コミュニケーションを通して現場と摺合せながら、研究をすすめています。

一方で、AR、インターフェース系の技術はニーズベースというより、シーズベースで進むことが多いため、コミュニケーションだけでは埋まらない部分もあるようで、研究技術によってその状況は多少異なるように感じます。

 

─では、橋渡しする存在として、現場にもデータサイエンティストがいるのですか?

 

(森氏)研究所のデータサイエンスチーム以外に、データに関連するチームをあげると、6つのチームが存在しています。

事業側のマーケティングチーム、構造化データを担当するDWHチーム、画面デザインを担当するチーム、UX(ユーザ・エクスペリエンス)チーム、非構造データを担当するビッグデータチーム、そして、我々技術研究所です。

 

 ■ロケットサイエンティストからデータサイエンティストの流れも

 

─データサイエンティストが不足するという問題についてお聞かせください。

 

ビッグデータマガジン インタビュー 楽天さま

<平手勇宇 チーフサイエンティスト>

(平手氏)データサイエンティストが扱うアルゴリズムやモデルなどの理論はあくまでツールです。それに詳しいことは重要ですが、それに加え、ビジネスでどう活用されるかという視点を持つことが大事なことだと考えています。両立する人材は確かに現時点では多くはないでしょう。

(森氏)以前、ロケット工学を専門としていた科学者が、冷戦後に金融工学にうつってロケットサイエンティストと言われ重用されたのと同じような流れが出てくるように感じます。複雑な証券化商品やデリバティブ取引を急成長させた金融業界の人材が、インターネット業界などに転職し、「データサイエンティスト」となっているということもあるのではないでしょうか。

さらに組織まで広げてみると、組織戦が得意な会社もあれば、個人戦が得意な会社もあります。データに対するアプローチの仕方や風土によってどのような人材が必要かは異なるでしょう。

 

─楽天ではどのような人材があうのでしょうか?

 

(森氏)楽天は、個人にも裁量があるボトムアップ型組織です。これに適応できる人材が活躍しているように感じます。比較的尖っている人が活躍する文化が楽天にはあります。

(平手氏)ボトムアップ型組織や風土ということでいえば、楽天には、データアナリストの同好会があります。先ほどお話したデータに携わる6つの部署から人材が集まり、議論をしています。通常組織の中で閉じこもらないことで、新鮮な議論が行われています。

 

 ■データサイエンティストの基礎として必要なものは、仮説とPDCA

 

─最後に、ビッグデータマガジンの読者にも多い、これからデータサイエンティストになりたいと思う人にとって、必要な視点/スキルは何でしょうか?

 

(森氏)楽天では、データを取ってPDCAを回す仕組みは現場にも組織的に定着していますが、このような仕組みを使いこなすスキルと、仕組みを必要とする組織・カルチャーはベースとして必要不可欠です。

(平手氏)あるデータを解析したら、どういう結果が出てどのように活用できるかという仮説力が重要だと思います。あとは、事象を構造的にとらえるためのロジカルシンキングと、ビジネス視点=目的意識も必要ですね。

(森氏)さらにいえば、数学、統計やデータマイニング、機械学習の初歩くらいは知っておいてほしいです!!

 

 ■インタビュー後記:データサイエンティストは一義ではない。様々な技術・知識・スキルを持った人が集まってデータを起点に意思決定できる風土が重要。

 

実は、最後の「データサイエンティストに必要な基礎スキル」についての議論は、盛り上がったまま時間切れとなってしまいました。

裏返すと、データサイエンティストが一義で定まるものではなく、複合的なものであり、また、人や組織によって異なる、期待するものが違うということを意味しているともいえます。

データサイエンスには、様々な技術・知識・スキルが必要であるものの、楽天では、全員がそれらをすべて兼ね備えたスペシャリストというわけではなく、それぞれのスペシャリストが存在し、お互いに補完していくチームが形成されていました。

お話を伺った森様、平手様とも、卓越した研究者でありながらも、素晴らしいビジネスパーソンであり、またデータサイエンティストでした。

今後、日本にこのような優秀なデータサイエンティストが生まれてくるには、楽天のように、日本に閉じず、英語で書かれた様々な最先端の技術にアンテナを張り、それらを用い、産学連携も進めながら、最先端な技術を作り出していくことが求められるでしょう。

一方で、データサイエンティストが増えていくためには、その裾野が広がっていくことも重要であり、データを起点としてPDCAを回せる人材が増えること、その風土が定着化すること、またデータをベースとした意思決定が主流になることが重要だと感じました。

 

 

    

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