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ビッグデータ活用で「命を守る」情報を提供 株式会社ハレックス 代表取締役社長 越智 正昭氏~ビッグデータマガジン・インタビュー~

time 2013/11/06

ビッグデータ活用で「命を守る」情報を提供 株式会社ハレックス 代表取締役社長 越智 正昭氏~ビッグデータマガジン・インタビュー~

ビッグデータマガジン 小暮です。

ビッグデータに関わるソリューションや人物のお話を伺う「ビッグデータマガジン・インタビュー」。前回に引き続き株式会社ハレックス(以下、ハレックス)の代表取締役社長である越智 正昭氏のインタビューをお送りいたします。

■緊急地震速報サービス「なまずきん」

— 緊急地震速報の仕組みについて教えてください。

気象庁は一刻でも早く震災から国民を守るための情報を提供するために、平成19年10月から「緊急地震速報」の運用を開始しました。緊急地震速報では震源に近い地震計で捉えた観測データを解析して震源と規模を推定し、震源からある程度離れた地域に対して到達時間や震度を可能な限り素早く発表します。第一報は地震発生から10秒以内に発せられ、観測点の観測データが増えて推定精度が向上する度に情報が更新され、随時「緊急地震速報」が発表されます。

 ハレックスでは、気象庁から発表された「緊急地震速報」をテレビ・BS・ラジオ局や民間事業者、自治体向けに速やかに提供するサービス「なまずきん」を展開しています。

 

— 「なまずきん」について詳しく教えてください。


ハレックスが提供している緊急地震速報サービス「なまずきん」では、気象庁から受信した「緊急地震速報」をもとに、震度や到達時間を推定して「なまずきん」をご利用いただいているお客様に向けて警報を直ちに発信しています。

気象庁の緊急地震速報には皆さんが携帯電話のエリアメールやテレビやラジオなどの「緊急地震速報」で受け取る「一般向け緊急地震速報」と呼ばれる情報のほかに、1kmメッシュで何秒後にどのくらいの強さの揺れが来るのかを知らせる「高度利用者向け緊急地震速報」の2種類があり、ハレックスではこの「高度利用者向け緊急地震速報」を利用して、気象庁から「緊急地震速報」を受信後、直ちにお客様の「なまずきん」の端末に、その地点ではあと何秒後にどのくらいの強さの揺れが来るのかの情報を配信しています。お客様のほうでは、ハレックスから提供されるこの情報をトリガーとして、工場内の機械を停止させたり、自治体が管理する水門を自動的に閉鎖するシステムと連動したりするというようなことも実際に行っておられます。

加えて、ハレックスでは、気象庁から「緊急地震速報」を受信した際には、瞬時に信頼性に関するチェックも行っています。「緊急地震速報」を受信した際に、複数の観測点で観測された情報に基づいた情報であるかどうかのチェックを行うとともに、揺れが到達したとしても直ちに命の安全に関わる災害につながりにくいような地震(例えば地下深いところで発生した地震)かどうかもチェックしています。

— 「なまずきん」端末には具体的にはどのような情報が表示されるのでしょうか。

 「緊急地震速報」がハレックスの配信センターからお客様の「なまずきん」導入端末に配信されると、推定震度や到達時間に加え、地図上に地震波の広がりがリアルタイムに表示されます。また、予め登録した拠点における推定震度に関しても瞬時に表示されるため、例えば震災時に全国各地に点在している工場設備やオフィスにおける被害の大きさを事前に推定することが可能になります。

ビッグデータと地震速報 ハレックスさまインタビュー

図1:緊急地震速報サービス「なまずきん」
地震波の広がりを地図上にリアルタイムで表示(左側)。また、各端末に予め登録された1,000以上の地点における、揺れの到達時刻予想や推定震度を表示することが可能です(右端)。

■緊急地震速報を活用した「推定震度マップ」の提供

— 緊急地震速報は揺れが到達する前に安全を確保するためにとても重要な情報ですね。

確かに「緊急地震速報」は個人の安全を確保するためには従来の地震速報では得られない即時性を発揮していますが、揺れが到来するまでの時間はごく短く、その情報が利用される価値は残念ながら限定的です。一方で、大きな地震が発生した直後、特に自治体や民間事業者は速やかに震災対応に向けた行動を取る必要があるのですが、そのためには、どこでどの程度の揺れが発生し、どの程度の被害が起きているのかを速やかに把握し、初動を開始する必要があります。

また、大きな揺れの地震の直後には通信回線が断絶し、各地の被害の状況の把握が困難になるという事象も東日本大震災の時には起きました。

そこで当社が開発したのが、緊急地震速報のデータを用いて、地震発生の直後に各地の揺れの状況を推定して地図上に“面”として表示する『推定震度マップ』という仕組みです。

— 「推定震度マップ」について詳しく教えてください。

ハレックスの緊急地震速報は、前述のように一般向けに配信されている「緊急地震速報」とは別に民間気象会社向けに配信されている「高度利用者向けの緊急地震速報」データに基づいて、日本の陸域を1kmメッシュの詳細さで予想震度の計算を行い、ご契約いただいたお客様に提供しています。この際、震源の位置やマグニチュードに加え、その土地その土地の地盤の特性を加味することで、想定される揺れの大きさを提供しています。

「推定震度マップ」でも、基本的にこの緊急地震速報発表時に行われる震度推定方法に準拠して震度推定を行います。この震度推定は1kmメッシュ毎に日本全国約38万ポイントで行います。この際、緊急地震速報と同じように震源位置やマグニチュードの他に地盤の特性を加味することで、気象庁の震度計が設置されている地点以外の地域における推定震度を提供することができます。推定された震度はGISに準拠した地図に利用できる震度分布図の形で(“面”の情報として)自動作成し提供しています(図2)。これにより、観測地点がない山間部などの気象庁の情報がない空白域でも、地震計の計測とほぼ同じ精度で震度情報を提供することができます。

— テレビで放映される数値のみの震度分布と異なり、地図上に詳細に色分けされるとわかりやすいですね。

 気象庁が一般向けに配信する震度情報は震度計が設置されている地点での情報ですが、震災時に自治体や民間事業者の防災担当者が求めている情報は「震度計が設置されている地点の情報」ではなく「どの地域がどの程度の被災をしているかを把握できる情報」です。例えば、「震度4」の揺れが起きた場合に、「震度5」に近い揺れなのか、それとも「震度3」に近い揺れなのかによって被害の大きさも異なりますよね。我々が提供するのは確定情報ではなく推定情報ですが、その地点ごとにマウスクリックにより震度4.8というように小数点での表示も可能です。また、実際に揺れが起きる前に受信した緊急地震速報を用いているため、大きな地震の発生により通信回線が断絶しても、この「推定震度」は計算することが出来ます。さらに、地震発生後1分前後で地図上に表示して提供することで、事態の掌握にかかる時間の大幅な短縮につなげ、震災の初動を早めることが可能になります。

大きな自然災害が起きるたびに“72時間生存率”という言葉を耳にすると思います。その“72時間生存率”を考えても大地震発生直後の初動の対応というものが極めて重要で、1分1秒でも早く、どこで何が起こったのかを把握できる情報の提供が求められるということです。このため、当社では地震発生後1分以内にこの『推定震度マップ』の情報を提供を行っています。これもまた当社独自のオンラインリアルタイム・ビッグデータ処理技術により実現しました。

ビッグデータと地震速報 ハレックスさまインタビュー

図2:推定震度マップ
2011年3月12日3時59分新潟県中越地方M6.6 予測最大深度6強の時の推定震度マップ。図はGIS地図(NTT空間情報提供)に重畳させたもの。

■気象ビッグデータを防災活用したソリューションの提供

—単なる情報を提供するのではなく、意思決定につながる情報を提供するということですね。

その通りです。私は気象情報に限らず、“情報”そのものにはほとんど価値というものは存在しないと考えています。“情報”はそれを用いて受け手がなんらかの判断や意思決定を行い、さらには具体的な行動を起こして初めて価値を産み出すものだと考えています。なので、もとになる情報を判断や意思決定、行動に直結するような情報に加工して提供することが我々気象情報会社に求められる一番のことだという認識でいます。それが我々気象情報会社に求められている最大の“付加価値”だということです。

地震の場合は、初動体制の早期確立のための情報がそれにあたると思っています。大きな地震が発生した直後には一刻も早く災害復旧に向けた行動を取る必要がありますが、そのためには災害状況を把握することが欠かせません。例えば電力会社や通信会社といったインフラ事業者では、どの地域の設備の被災状況を確認しに行くべきかを判断するため、またテレビ局等ではどの地域に取材班を派遣するかを判断するために、各拠点の揺れの大きさを把握するための詳細な情報が求められます。それも出来る限り早期に。ハレックスの「推定震度マップ」はそれを実現したものです。

気象庁からは、地震や大雨の情報等、日本の自然災害の発生に関する気象情報が日々配信されています。その種類は多岐に渡り、情報のサイズも膨大、さらに更新頻度も頻繁です。それらの情報を読み取り防災活動に活用するためには、利用者側にも気象や防災の深い知見や経験が求められますが、利用者側では人事異動等によりエキスパート人材を育成・確保することは極めて難しいというのが今の状況です。

そういう背景から、我々のような、気象のエキスパート人材を抱える民間気象会社に求められていることは、気象庁が発表する気象ビッグデータを単に配信するだけではなく、気象データを利用者の視点から捉え、利用者が防災活動における意思決定や判断を速やかに行うための“ソリューション”にまで昇華した形で提供することだと考えています。

次回は、海洋情報サービスに関するお話と、今後の気象情報ビジネス市場におけるビッグデータ活用についてのお話をお伺いいたします。

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執筆者情報

ビッグデータマガジン 小暮小暮 昌史(こぐれ まさし)

所属:人材開発サービス事業部

【経歴】大学院博士課程(専攻は火山学)中退後、2007年に株式会社チェンジ入社。内部統制支援、システム移行支援、海外進出支援コンサルティング業務に従事。

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